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静岡県沼津市の愛鷹山麓で栽培されてきた伝統野菜の「大中寺いも」は赤ん坊の頭ほどもある大きな里芋です。その名前の由来となった、地元の寺「大中寺」の副住職が大中寺いもを原料とした「ジン」を考案しました。
2月、新作ジンのお披露目が行われました。試飲した人たちは、「飲みやすいけど、しっかり香りの個性がある」、「グレープフルーツのような香りが爽やか」と高評価。
「トニック割りもいいけれど、お湯割りにするともっと香りが楽しめると蒸留所の方に教わった。購入して自宅で楽しみたい」といった声も。香りで個性を楽しむクラフトジンならではです。
大中寺いもとは?
厳密に言うと「大中寺いもを原料とした焼酎を、再蒸留してジンを作った」ということなのですが、どうしてお寺の副住職がジンを考案することになったのでしょうか。
下山光順副住職によると百年ほど前に大中寺で、ご滞在中の皇室の方々を地元名産の里芋でおもてなししたことから「大中寺いも」と呼ばれるようになったそうです。一時期は生産者の減少によって存続が危ぶまれた大中寺いもですが、「大中寺いもの会」が設立され、有志の力によって今日まで大切に守られてきました。
大中寺・下山光順副住職:
しっかりと地元で愛される存在にしていかなければ消えてしまうという危機感はありました。寺の名前がついているというご縁もありますので、栽培農家さんのサポートや、新商品の考案など、わたしにできることがあるならばお手伝いしようと思いました
“わたしにできることがあれば”大中寺いものPR
副住職は、まずは大中寺いもの存在を知ってもらうために、さまざまなPRをすすめます。収穫体験会や、包装紙などのパッケージデザインなど、持ち前のセンスの良さと、気さくな人柄で、大中寺いものファンの輪は少しずつ広がっていきました。
約700年続く歴史ある寺の名前がついている以上、正しい情報をしっかりと伝えようとSNSを通じた情報発信も副住職自らが続けています。それを見た県外の人からの注文も入るようになりました。
「香り」の決め手は境内の木の実
ジンの本場、イギリスへの留学経験がある副住職が、大中寺いもでジンを作ろうと思いついたのは4年前。友人と訪れたジン専門店でいろいろと話を聞くうちに、国産のジンはベースとなるアルコールに焼酎が使われることが多いと知り、既に商品化されている大中寺いもの焼酎をジンに活用できるのではとひらめいたそうです。
その1年後に、タイミングよく沼津市内に蒸留所がオープン。副住職はさっそく、焼酎ベースのジン開発の話を持ち掛けました。
クラフトジンはベースとなるアルコールと、「ローカルボタニカル」と呼ばれる香り付けの地元の植物で個性が決まります。ベースアルコールには大中寺いもの焼酎を使い、ローカルボタニカルには境内にある楠(クス)と榧(カヤ)の実を使いました。
大中寺・下山光順副住職:
わたしがゼロから何かを作りだしたわけではなく、あくまで既にあるものを活用しただけです。芋の生産者の会、焼酎の製造元、ジンの蒸留所、違う立場の視点から1つの完成図を共有する難しさは確かにありましたが、いざ作ってみると、クスとカヤの実が、予想以上にいい香りを演出してくれて嬉しかったです。蒸留所がスパイスなども取り入れてうまくブレンドしてくれました
大中寺いもの収穫時期は短く、一度タイミングを逃がすと次に手に入るまでまた1年待たされます。
じれったい思いを乗り越えて、この春4年越しで完成した大中寺いものクラフトジン。副住職のセンスと伝統への責任感、地域への愛から生み出されたクラフトジンが、これからどのような成長を遂げるのか、ファンの期待は膨らみます。
クラフトジン「Muso」は3月11日に発売開始。価格は6500円です。沼津市内の取扱い酒販店で購入できるほか、沼津市のふるさと納税返礼品にもなっています。また沼津蒸留所ではグラス販売で、Musoを提供しています。
追記:オンライン注文は完売しました。(3月21日)
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